建設業法では、建設業の営業に関する「帳簿」を備え、保存しなければならないとされています。
ここで言う「帳簿」とは、一般的にすぐ思い浮かぶであろうよくある「会計帳簿」のことではありません。
では、建設業法における「帳簿」とは、いったいどんなものなのでしょうか?
帳簿に記載しておかなければならない内容
帳簿は任意の書式で問題ありませんが、建設業法で定められた事項が記載されている必要があります。
帳簿の保存期間は5年間(発注者と直接締結した住宅を新築する建設工事に係るものは10年間)とされています。また、電磁的記録によることも可能です。
帳簿に記載しておかなければならない事項は、次のとおりです。
- 営業所の代表者の氏名・就任年月日
- 注文者と締結した建設工事の請負契約に関する次の事項
①請け負った建設工事の名称と現場所在地
②注文者との契約締結日
③注文者の商号・所在地(注文者が建設業者のときは、許可番号)
④注文者から受けた完成検査の年月日
⑤工事目的物を注文者に受け渡した年月日 - 発注者と締結した住宅の新築工事の請負契約に関する次の事項
①当該住宅の床面積
②建設業者の建設瑕疵負担割合
③発注者に交付している住宅瑕疵担保責任保険法人(資力確保措置を保険により行った場合) - 下請契約に関する事項
①下請負人に請け負わせた建設工事の名称と現場所在地
②下請負人との契約締結日
③下請負人の商号・所在地(下請負人が建設業者のときは、許可番号)
④下請工事の完成を確認するために自社が行った検査の年月日
⑤下請け工事の目的物について、下請業者から引き渡しを受けた年月日
※特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限らない。)となって、一般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人企業を除く。)に建設工事を下請負した場合は、以下の事項についても記載が必要となります。
⑴支払った下請代金の額、支払った年月日及び支払い手段
⑵支払手形を交付したときは、その手形の金額、交付年月日、手形の満期
⑶代金の一部を支払ったときは、その後の下請代金の支払い残額
⑷遅延利息の額・支払日(下請負人からの引き渡しの申出から50日を経過した場合に発生する遅延利息(年14.6%)の支払いに係るもの)
帳簿の作成例
帳簿に添付しておかなければならない書類
建設業法では、帳簿に添付しなければならない書類についても定められています。
立ち入り検査の際に、「帳簿を見せて欲しい」と言われることがありますが、それは、帳簿に、契約書や施工体制台帳、主任技術者、監理技術者に関する資料など、立ち入り検査時にチェックされる書類が添付されているため、帳簿を確認することが手っ取り早いためです。
帳簿が適正に作成・保存されていれば、立ち入り検査の際に慌てて資料を準備するということにはなりません。
- 契約書又はその写し(電磁的記録可)
- 特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限らない。)となって、一般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人企業を除く。)に建設工事を下請負した場合は、下請代金の支払済額、支払った年月日及び支払手段を証明する書類(領収書等)又はその写し
- 建設業者が施工体制台帳を作成したときは(元請工事に限る。)、工事現場に据え付ける施工体制台帳の以下の部分。(工事完了後に施工体制台帳から必要な部分のみを抜粋する。)
①当該工事に関し、実際に工事現場に置いた監理技術者の氏名と、その者が有する監理技術者資格
②監理技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名と、その者が管理を担当した建設工事の内容、有する主任技術者資格
③下請負人(末端までの全業者を指しています。以下同じ。)の商号・名称、許可番号
④下請負人に請け負わせた建設工事の内容、工期
⑤下請業者が実際に工事現場に置いた主任技術者の氏名と、その者の主任技術者資格
⑥下請負人が主任技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名と、その者が管理を担当した建設工事の内容、有する主任技術者資格
帳簿と同様に保存しておかなければならない書類
帳簿とは別に、営業に関する図書の保存も義務付けられています。帳簿と同様に、保存は電磁的記録によることも可能です。
営業に関する図書は帳簿の保存期間よりも長く、10年間の保存義務があります。
営業に関する図書の保存義務があるのは、発注者から直接工事を請け負った元請業者に限定されています。
営業に関する図書
- 完成図
建設工事の目的物の完成時の状況を表したもの - 発注者との打合せ記録
工事内容に関するものであって、当事者間で相互に交付されたもの - 施工体系図(作成義務のある工事のみが対象)
建設工事では、目的物の引き渡し後に目的物の欠陥等を巡って紛争になることが多いので、施工に関する事実関係の証拠となる営業に関する図書の保存が求められています。
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